突発性難聴とは
内耳から脳の異常が原因で起こる難聴を、感音難聴といいます。
突然におこる原因不明の感音難聴が突発性難聴です。
突発性難聴の「突発性」とは、「ある日突然」「原因不明」という意味です。
突発性難聴は、子供から高齢者までどの年齢の方でも発症する可能性があり、特に40~60代の人に多くみられます。日本では年間1万人に1~3人ほどの人が突発性難聴にかかっていますが、年々増加しています。
多くの場合は、片耳だけに起こります。
全く聞こえなくなる重度なものから、聞こえはするけど耳が詰まっているような気がする(耳閉感)という軽度なものまで症状や難聴の程度は様々です。
聴力の低下のほかに、耳鳴やめまい、吐き気を伴うこともあります。
以下のような症状があったら、お早めに受診していただくことをオススメしています。
・耳が突然聞こえにくくなった
・耳が詰まっているように感じる(耳閉感がある)
・音が二重、響く、エコーがかかったように感じる
・耳鳴りが続いている
・聴力の低下のほかにめまいや吐き気を伴うことがある
突発性難聴のメカニズム・原因
原因については、以下の4つが推測されていますが、はっきりした結論はでていません。
① 風邪やおたふくなどによるウィルス感染
② 内耳の血管の痙攣などによって血液の流れが悪くなること
③ 気圧の変化などによって、内耳の一部が傷つくこと
④ 全身の病気と関係して内耳の代謝障害が起こること
現在は、突発性難聴というひとくくりの病名で呼ばれていますが、将来、研究がすすむとそれぞれの原因によって区別され、別の病気として扱われるようになるのではないかと言われています。いまだ原因が不明ですので、根本的で確実な治療法は確立されていません。
突発性難聴の診断
① 聴力検査
治療の効果をみて、治療方針を決定する為に、来院時に毎回、聴力検査が必要です。
② 血液検査、尿検査
糖尿病など全身の病気がないかを診断します。
③ めまいの検査
難聴に伴い、めまいがある場合に行います。
④ 脳MRI
小脳橋角部の脳腫瘍(聴神経腫瘍が代表的です)で突然、聞こえなくなることがあります。脳MRIで脳腫瘍がないかを検査します。当院から検査日時の予約を行って、連携病院で脳MRIを撮像していただきます。
突発性難聴の治療
発症から治療開始までの時間が非常に重要になります。
発症後2週間以内に治療を始めることが望ましく、2週間以内であれば、改善が期待できます。一方で、発症後1ヶ月以上過ぎてしまうと、著しい改善は望めないとされています。
周囲の音が聞き取りづらい、耳鳴りがするといった症状がありましたら、早期に耳鼻咽喉科で聴力検査を行うことが必要です。
症状が軽い場合は、内服薬で治療します。
一般には副腎皮質ホルモン(ステロイド)や、循環改善剤(血液の巡りを良くする)、浸透圧利尿剤(内耳のむくみを軽くする)などの薬を、2週間程度内服していただきます。
高血圧や糖尿病など持病をお持ちの方は、治療薬の変更が必要です。
高血圧や糖尿病の方に、いきなり副腎皮質ホルモン(ステロイド)を投与すると、高血圧や糖尿病の病気の状態が悪くなります。その際には柴苓湯などの漢方薬を使用します。どうしても副腎皮質ホルモン(ステロイド)の投与が必要なときには、内科の先生に相談することが必要です。
うまく難聴が改善しない時には、内服薬に加えて当院で1週間程度ステロイドの点滴を行います。難聴がうまく改善した方は、そのまま当院での治療を継続していただきますが、改善がみられない時は、連携病院にご紹介させていただきます。
突発性難聴 日常生活での注意
突発性難聴は原因がはっきりしていませんが、生活習慣の乱れやストレスも影響しているとされていますので、できるだけ安静にして、ストレスを軽減していくことに注意が必要です。また大きな音を聴かないようにする、飛行機やダイビングのような急激な気圧の変化を避けるなど、耳へ負担をかけないようにすることも重要です。
急性低音障害型感音難聴とは?
急性低音障害型感音難聴とは、突発性難聴で、低音部だけに難聴が起こる病気です。
急性低音障害型感音難聴の特徴
比較的軽症のものが多く、治りやすいことが特徴です。
一方めまいが起こったり再発することが多く、女性に多いことが特徴です。
急性低音障害型感音難聴の診断
自覚症状としては耳鳴が最も多く、その次に耳閉感、難聴となっています。約半数では、聴力が悪くなったという自覚がありません。その為に、耳管狭窄症と間違われやすい病気です。耳閉感がある場合には、頻回に聴力検査をする事が必要です。
急性低音障害型感音難聴の治療
治療としては、突発性難聴とほぼ同様ですが、メニエール病に準じて浸透圧利尿剤が有効と言われています。
急性低音障害型感音難聴は、1~2週間以内に治療を始めれば、80%の方は改善されると言われています。しかし5~6%の方では早く治療しても治まらなかったり、一度治ってもまた難聴が再発することがあります。そのときには、難聴を繰り返すことが特徴である「蝸牛型メニエール病」と診断名が変更になることがあります。そのまま放置しておくと数年以内にめまいを起こすようになって「メニエール病」と再度診断名が変更になります。