鼓膜チューブによる治療とは?
鼓膜チューブによる治療の正式名称は、鼓膜換気チューブ留置術といいます。
中耳腔に液体が長期間貯留する滲出性中耳炎や、感染を繰り返す難治性急性中耳炎で行われる治療法です。
鼓膜にチューブを留置することで、滲出性中耳炎の原因である中耳腔の貯留液が耳管を通して鼻腔へ抜けやすくなり、耳がふさがった状態を改善します。
鼓膜チューブによる治療が有効な疾患
「お薬での治療を行っているにも関わらず、中耳炎の症状が長期間(3ヶ月以上)にわたって改善しない」「何度も急性中耳炎の症状を繰り返す」といった患者様に対して鼓膜チューブを行います。
鼓膜換気チューブ留置術は、入院が必要?
当院では、鼓膜換気チューブ留置術を実施するための設備を揃えております。
小学生以上で、じっとしていることが可能ならば、日帰りで実施できます。入院等の必要はございません。
約15分程度で治療が終了します。
ただ、不安のために暴れてしまう小児では、病院に入院して全身麻酔での手術が必要になります。
鼓膜チューブ挿入術の流れ
①鼓膜に対して局所麻酔を行う
まずは鼓膜に麻酔をかけます。
耳に麻酔液を入れた後、イオントフォレーゼという通電装置を用いて、鼓膜に麻酔をかけます。(15分程度)
②鼓膜切開を行い、鼓膜チューブをいれる
鼓膜を数mm切開して、鼓膜チューブを挿入します。
③中耳腔から貯留液が抜ける
鼓膜チューブの効果で2週間から1ヶ月程度で中耳腔から貯留液が抜けていきます。
鼓膜チューブの留置期間は、1〜2年程度になります。
鼓膜チューブ留置後の注意点
<手術後の注意点>
・細菌感染を予防するために、抗生物質の内服薬や点耳薬を使用します。医師の処方に基づき、ご使用ください。
・洗髪等は、手術後当日に実施しても問題ありません。その際に泡などが入ったらしっかりと洗い流すようにしてください。
・水泳等は1週間程度控えるようにしてください。
<日常生活における注意点>
・日常生活の中で、耳垢や風邪が原因でチューブが外れてしまうことがあるため、術後は月に1回程度、チューブの状態を点検するために受診する必要があります。来院の際に聴力検査を行うことで、中耳炎の状態を確認します。
・水泳(プール、海水浴)をするときには、汚い水が入らないように耳栓をしてください。
鼓膜チューブ挿入術の合併症
①耳漏
鼓膜に穴が開いている状態が持続しますので、そこから感染が起こりやすくなり、風邪をひいたときなど耳漏が出やすくなります。
抗生物質の内服薬や点耳薬が必要になります。
②鼓膜穿孔
必要な留置期間が過ぎたら、留置していたチューブは外来で抜去します。
チューブを抜去した後、通常鼓膜は1ヶ月以内に閉鎖します。
チューブ留置中に耳漏を繰り返していた場合や重症のアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎を併発している場合には、まれにチューブの入っていた鼓膜の穴が閉鎖しないことがあります。
この際には、体が成長した後(約15歳以降)、鼓膜形成術(鼓膜を閉鎖する手術)を行って鼓膜に残った穴を閉鎖します。
鼓膜チューブ挿入術の料金
3割負担の場合 | 8,010円 |
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鼓膜チューブ挿入術についてよくある質問
- 鼓膜チューブはいつまで入れておきますか?
- 通常、1〜2年程度は入れておくことが多いです。鼓膜チューブが耳の中にあっても、日常生活にはほとんど影響はありません。
ご安心ください。 - シャンプーや水泳をしてもいいですか?
- シャンプーについては、手術後当日からしても問題ありません。
水泳については、水の中にある細菌が耳の中に入らないように耳栓をしてください。 - 鼓膜チューブが抜けたり、詰まったりした場合はどうなるのですか?
- 鼓膜チューブが抜けたり、詰まったりして、中耳炎が再発した場合には、一度古い鼓膜チューブを抜いて、再度新しいチューブを留置する手術が必要になります。