スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎の治療法のひとつに、舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう)があります。お薬を服用したり、スプレーを噴霧したりする対処療法(一時的に症状を緩和する治療)に対して、舌下免疫療法は唯一、アレルギー性鼻炎の根治治療(完全に治す治療)となります。舌下免疫療法は、治療薬を舌の下に投与する治療法で、自宅で服用が可能です。
月1回の通院で、くしゃみ・鼻づまり・目のかゆみが改善されて根治すればもう通院の必要がなくなります!!
「舌下免疫療法」では、アレルギー検査が必要です。血液検査でスギ花粉症またはダニアレルギー性鼻炎と確定診断された患者さんが治療を受けることができます。
通常根治までには、3~5年の治療期間が必要です。
対象年齢は5歳~65歳としております。保険診療内の治療であり、小児では公費負担、3割負担の場合は診察費、薬剤費で月3,500円程度の負担となります。月1回、アレルギー性鼻炎免疫療法治療管理料が加算されます。3割負担の方で、初回は840円、2回目以降は80円です。
治療期間が長くてもいいから、鼻水 鼻づまり 目のかゆみなど、アレルギー性鼻炎による症状を完全に治したい方
飲み薬やスプレーを使っても症状がコントロールできない方
眠気など内服薬の副作用がひどい方
屋外での活動が多く、どうしても症状が起こりやすい方
来年以降受験を控えており、なるべく眠くなるような薬を使いたくない方
職業ドライバーなど、内服できる治療薬が制限される職種の方
将来に妊娠した際に内服薬が使えない事を不安に感じる方
舌下免疫療法で投与するお薬は以下2種類です。スギアレルギーかダニアレルギーかによって投与するお薬が異なります。
スギアレルギーの場合
スギ花粉の治療薬は、花粉飛散期(1~5月)には開始はできません。そのため、花粉が飛散していない6~12月に治療を開始する必要があります。ダニ治療薬につきましては、いつからでも開始することができます。
スギアレルギーの場合、まずは、シダキュア2,000JAU錠を1週間投与いたします。こちらを1日1錠服用していただきます。(こちらで副症状が出てしまう方には、2,000JAU錠を1週間以上延長して内服して頂く場合があります。)治療を開始してから2週目以降は、シダキュア5,000JAU錠を1日1錠服用していただきます。
ダニアレルギーの場合
ダニアレルギーの場合、まずは、ミティキュア3,300JAU錠を1週間投与いたします。こちらを1日1錠服用していただきます。(こちらで副症状が出てしまう方には、3,300JAU錠を1週間以上延長して内服して頂く場合があります。)治療を開始してから2週目以降は、ミティキュア10,000JAU錠を1日1錠服用していただきます。
(1)1日1回治療薬を舌の下に1分間おきます。初回のみ院内で30分の待機が必要です。
(2)その後5分間は、うがい・飲食を控えます。
(3)治療後2時間は入浴・運動・飲酒はできません。
(4)3年は治療の継続が推奨されており、有効率は80~90%です。
※3年間治療を行っても、1割から2割の患者さんでは効果が出ないことがあります。
(5)スギ花粉の治療薬は、花粉飛散期(1~5月)からの開始はできません。
(6)スギ・ダニ同時投与の場合は、どちらか一方の治療薬が安定して使える状態(内服開始後、約1ヶ月)になってから、併用を開始しています。
(7)月1回の通院が必要となります。
保険診療内の治療であり、小児では公費負担、3割負担の場合は診察費、薬剤費で月3,500円程度の負担となります。月1回、アレルギー性鼻炎免疫療法治療管理料が加算されます。
3割負担の方で、初回は840円、2回目以降は80円です。
以下の方は治療をすることができません。
・5歳未満の小児の方
錠剤を1分間口の中に保持することができないため、治療対象になりません。
・重症気管支喘息の方
喘息発作を誘発するまたは重症化するおそれがあるため、治療対象になりません。
・妊婦の方、授乳中の方
妊娠中、授乳中の投与に関する安全性は確立していません。
妊娠中の治療導入はできませんが、舌下免疫療法中に妊娠した場合でも治療を継続することができます。
授乳中の婦人には投与しないことが望ましいですが、やむを得ず使用する場合には授乳を避けさせることが必要です
・抜歯や口の中の術後、または口の中に傷や炎症などがある方
歯科治療で口腔内に傷ができている場合や、ひどい口内炎の場合、傷口から薬の吸収率が上がってしまうため、薬を使用することができません。
・重症の心疾患、肺疾患及び高血圧症がある方
非選択的β遮断薬、三環系抗うつ薬などのお薬を服用している方では、副反応が強くあらわれることがあり、治療対象になりません。気になる方は初回診察の際にご相談ください。
・全身性ステロイド薬の投与を受けている方
全身性ステロイド薬の投与により、免疫系が抑制され治療薬が効きづらくなるため、対象になりません。
アレルゲンを投与することから、まれにアレルギー反応による副作用が発現する可能性があります。そのため1回目のスギ花粉のエキスを置くのはクリニックで医師が行い、置いた後30分はクリニックの中で過ごしていただき、副作用が起こらないか確認する必要があります。治療開始後1ヶ月を経過して問題がない場合、その後副作用が出るということはほとんどありません。
最もよく起こる副作用は、口腔内や唇の腫れ・かゆみです。
抗アレルギー剤を内服することで、1日で治ることがほとんどです。
特にダニの舌下免疫療法は、ダニアレルゲンを使った治療ですので、一時的にくしゃみ、鼻みずなどのアレルギー症状が増悪します。これらの症状は、治療開始直後に多く、治療開始から1ヵ月程度持続します。
重症のアレルギーであるアナフィラキシーショックにより血圧低下、呼吸困難、全身紅潮、顔面浮腫・咽頭浮腫等の血管浮腫、蕁麻疹、喘息等が起こる可能性があり、その時には病院での緊急の治療が必要になります。1億回に1度程度のアナフィラキシーショックが報告されています。死亡例はありません。
当院では緊急搬送先医療機関として東邦大学大森病院と提携しております。但し緊急時であっても、病院の事情で受診ができないことがあります。
血液検査で、スギ花粉、ダニ、ハウスダストが陽性と判明している必要があるため、血液検査が必ず必要です(口頭での申告不可)。 最近の検査であれば、他院で施行したものでも有効です。他院で検査済みの方は、検査結果を必ずご持参下さい。
検査結果がないと治療を開始できません。他院での血液検査結果がない場合には、当院で再度血液検査を施行させていただきます。
同時に内服を開始して副作用が出た場合、どちらの薬が原因か判断できません。
2種類の薬を内服するときには、最初の薬を開始して1ヶ月を過ぎてから、もう一方の治療を開始することをお勧めしています。
1)飲み始め~1ヶ月まで
最初の1ヶ月の間は、新たに使用する薬を朝に服用、以前から使用していた薬を夕方に服用して下さい。副作用が出た場合、どちらの薬によるものかを分かりやすくするため、また朝飲むことで、2種類目の薬の副作用に対応しやすくするためです。
(2)1ヶ月以降
2種類目の薬を開始して1ヶ月以上経過すれば、2種類の薬を同じ時間帯に内服しても大丈夫です。ミティキュアとシダキュアどちらから飲んでも大丈夫ですが、1つめの薬を飲んだ後、1分以上あけて、2つめの薬を内服して下さい。
1. 初回の受診
(1)受付にてまず「舌下免疫療法についてのご案内」に目を通していただき、最低3年間毎月通院できるか、治療に支障を来す持病がないかなどを確認させていただきます。
(2)アレルギー検査を行い、スギまたはダニが陽性であることを確認して、スギ花粉症、ダニアレルギーと確定診断をします。他院でアレルギー検査を受けている場合、検査結果をお持ちいただければ結構です。
(3)医師の立ち会いのもと、錠剤を舌の下に置きます。錠剤をそのまま1分間、口の中に貯めて飲み込まないようにします。1分経過したら錠剤を飲み込みます。
(4)副作用がおこらないか確認するために、待合室で30分過ごしていただきます。気分不良などあれば、早めに受付スタッフにお声かけください。
(5)30分間の待機後に再度診察をいたします。口の中に問題がないかなど確認し、診察終了です。
2. 初回の受診の翌日から2回目(1週間後)の受診まで患者さんにしていただくこと
(1)錠剤を1日1回舌の下に置きます。副作用が起きた時の対処がしやすいため、置く時間帯はできれば午前中が望ましいです。錠剤をそのまま1分口の中に貯めて飲み込まないようにします。
(2)1分経過後、錠剤を飲み込みます。錠剤を飲み込んで5分間は、うがいや飲食をしないでください。また錠剤を飲み込んで30分間は、激しい運動やシャワーなど血の巡りがよくなりすぎるようなことはしないでください。
3. 2回目の受診
診察の時に口の中に腫れがないか、口の中やのどや耳のかゆみ、のどの違和感などの症状が起こったりしていないか確認します。2回目の診察以降は上記のように錠剤を1日1回舌の下に置くことを続け、毎月1回通院していただきます。